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むかし、むかし、浦島は
2021-06-06
令和3年6月5日(土)午前、埼玉県川口市在家町・・
昭和35年創業の株式会社藤島住宅分譲地の全24棟の一画・・
1号棟にて見学希望者を待つべく待機・・
やって来るは、入居済みのとある奥方・・
当該敷地に「巨大亀」侵入との通報あり・・・
「かめですか?」
「そう、かめです。」
「カメってあの亀ですかね。」
「そう、あの亀です。」
訊けば、大きな亀が敷地内の「犬走」を結構な速度で闊歩しているとのこと。
「なんとか、なりませんかね?」と奥様
「なんとか、と言われましても・・」
突然の出来事に心の声がそのまま表に出てしまう私。
「そうですよねー。」と、そんな私の気持ちを察しつつも戸惑う奥様。
お互いどうしていいかわからない状況が数秒間。
「とにかく、見せて下さい。」と、落ち着きを取り戻した私は、敷地内への立ち入り許可を得て建物脇の「犬走」と呼ばれるスペースを若干半身の姿勢で進み始めた。
そのお宅の隣の奥様と男の子も自宅の敷地内から様子を伺っている。
「あ、そっち行きましたよ。」と隣の奥様。
男の子も、興味深そうに見ている。
私は「そっち」へ回り込む。
その時、その亀が裏側から姿を見せた。
「結構、早く歩くので怖いんですよね」と奥様が言っていた通りの感想を私も抱く。
若干躊躇しながらも、私はスタスタと亀に近寄り、両手で甲羅を抱えて外に連れ出そうとする。
一瞬手足頭を引っ込めた亀であったが、異常事態を察知したのか、急に手足をバタつかせて、その爪が私の手の皮膚を攻撃する。
「イタタ!」
実際には大して痛くはなかったのだが、感じるより先に言葉が突いて出る。
「手袋が欲しいですねー!」
このまま長い時間掴んでいると、いよいよ亀が本気を出して攻撃してくるのではないかと思うと少し怖かった。
車の中にある作業用の手袋を一旦取りに行くことも考えたが、とにかく今はお客さんの敷地内から亀を出すことを優先するべきだと私は考えた。
「あとはこちらでどうにかしますので」と奥様に伝え、さっきまで私が待機していた、まだ販売中の1号棟まで戻ろうとした。
その時、「写真撮っていいですか?」と、亀の搬出成功に安堵した奥様が仰った。
その呑気さになぜか私は好感を持ち、「いいですよ。」と掴んだ亀を奥様に向けて差し出した。
「パシャ」
2021年、まだまだSNS全盛期ならではの一コマなのであろうか。
と、その時、
「ハイ、これ。」
先程の隣の男の子がオレンジ色の作業手袋を私に差し出していた。
さっきの私の様子を見て、持ってきてくれたのだった。
しかし私の心中は、「もうここまで運んだし、車の中に自分の手袋あるし。」今更あえて人様の手袋を借りるというのも気が引けてその申し出を断ってしまった。
男の子の気持ちよりも、合理的な判断を優先したのだった。
ところが、そのお母さんであるところの隣の奥様が「いいですよ、それあげます。」と言ってくれたので、私はその男の子に通常の倍の賛辞と感謝の言葉を持って自責の念を振り払ったのであった。
その後でさらにその「お隣」の奥様は、とりあえずの「亀捕獲用」にと、段ボールを持ってきてくれた。
「段ボールと亀」を1号棟の敷地内に持ち帰った私は、すぐに然るべき役所に電話しましたが、土曜日ということがあり、緊急連絡先でも、「今日の対処はしかねる」とのことで途方に暮れてしまった。
「こういう時は、西沢ぶちょーだ!」
大好きな漫画「こち亀」調のアレンジで我が上司の呼び名を心の中で叫ぶ。
「そんなわけで、月曜日まで捕獲しておく容器が必要です。」と電話で相談する。
すぐに来てくれた。
「なるほどー、結構大きいねー」
「容器を持ってくるにしても、大きさを確かめてからと思ってねー」
いつもの温和な口調で言いながら、何かを逡巡している様子。
「それと、もしかしてと思ってねー」
「なんですか?」
「さっき、2号棟の掃除をしていたらねー」
「ええ、ええ。」
「隣の号棟の奥様が家の周りをぐるぐる回りながら、何か探している様子だったんだよねー」
「そ、それって正に!」
「じゃないかと思ってねー」
「すぐ、ピンポンしてみましょう!」
「そうだねー」
すぐにそのお家へ向かい、インターフォンを押す。
しばらく返事がない。
(くそう、留守かー。)とあきらめかけたその時、
「はーい」
「あの、亀探してませんでしたか?」
「はい!はい!はい!」
なんで知ってんの?と言わんばかりのこちらの奥様の口調でございました。
とりあえず、亀は1号棟に置いたままだったので、私はその奥様が外に出てくる前に、亀を取りに戻った。
私が戻る前に奥様が出てきてしまったようで、その少しの空白時間を埋めるのに部長が苦労されている様子が伺えました。申し訳ない。
見事再会を喜ぶ奥様に今回の経緯を説明。
亀が発見されたお宅の奥様にお声がけをしていただくようお願いして部長と私はまた、1号棟に戻った。
「ぶちょー、お手柄でしたね。」
立場上、よろしくない言い方ではあったが、「お手柄」とは、このことだな。という思いが先行し、私は失礼を承知の言葉で上司の機転を労った。
「いやー、一時は芝川に放流しとけばいいかな。とか思ってましたからね」と私。
プライベートなら多分、そうしていただろう。
役所の緊急連絡先の人も、「多分そうしていただくことになると思います。」と言っていたし。
ワニとかの危険な動物でない限り、そうしてもらうことが多いそうだ。
「ブログに書くの?」と部長。
「あ、俺も写真撮っておけばよかった!」
「アハハ!」と二人笑い合う。
亀を助けた私達。
「何か期待しても良いんですかね。」
あはは。とまた二人笑い合ったのであった。
以上。
㈱藤島住宅 岩原 賢太郎
テーマ名 その他
ページ作成日 2021-06-06