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Nature Ville 川口在家町物語
2020-01-27
ピッ、カチャ。カチャ。
スマートコントロールキーとはよく言ったものだ。
マウンテンパーカーの胸元にある縦型のジッパー付きポケットにキーを収めたまま、ボタン一つで玄関の施錠を行うと、男は自宅前で足を縦横に大きく広げて柔軟体操を始めた。
冬のある日のことだった。
都心から少し離れたJRの駅から徒歩13分ほどの住宅地。
35年ほど前に区画整理によって整備された、落ち着きのある街並み。
6m幅の開発道路に車の往来はなく、ゆっくりと入念に、男は柔軟体操を行っていた。
この住宅を購入する以前に住んでいたエリアは都心に近く、通勤は便利であったが、道が狭く、生活習慣病予防にと始めたジョギングをするのにも、適当なコースがなく、何となくストレスを感じながら走る時間が多かったと男は感じていた。
だが、この街に移り住んでからというもの、そのようなストレスにさらされることなく、ジョギングを続けられていることに満足していた。
柔軟体操を終え、いつものようにゆっくりと走り出す。
ご近所さんの家々は静かだ。
同じタイミングで入居したせいか、ご近所とは割合仲良くしていた。
夏にはご近所を巻き込んでバーベキューなんかを出来たら良いなと、何となく考えていた。
1分ほど走るとほどなく、芝川土手のサイクリングロードへ入る。
このコースが実に良い。
川沿いには幼稚園から小学校、中学校、高校、大学と一通り揃っており、時間帯によっては授業や部活動など、若者の活気が中空を飛び交っていて、なんとなく元気が湧いて来る。
各世代の、大勢の人たちの日々の営みが身近に感じられることは、何となく今自分がこの世の中の、人生のどのあたりにいるのかを明確に教えてくれるような気がして、安心感のようなものを覚えるのであった。
当初は1.5kmくらいを走ったところで折り返し、3kmのジョギングコースとしていたが、今は距離を伸ばし、計5kmほどのコースを走っている。
北へ向かい、さいたまの見沼田んぼで自然を感じるもよし。
南へ向かい、東京の都心を駆け抜けるもよし。
「いつかこの芝川から新芝川を経由して荒川を渡り、赤羽駅から電車で帰ってみたい。」
男は今日の走りを終えると、妻や子供、家族とは関係のない、自分だけの、どうでもいいような、あいまいなライフプランに思いを馳せながら、風呂に浸かる。
昨晩入れたお湯だったが、あらためて沸かすこともなく、とりあえずはそのまま浸かることができることに、住み始めた当初は驚いたものだ。
バスタブの栓を抜き、そのまま洗浄する。
さて、今日も楽しい休日になりそうだ。
ジョギングによるその最大の効果は何よりこの「爽快感」だ。
まさに、Priceless。
休日はまだ始まったばかりである。
いつか、続く。
テーマ名 物件情報
ページ作成日 2020-01-27