エモーショナルウォレット | さいたま市・川口市の不動産のことなら藤島住宅

藤島友の会

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    2017-10-01

    最近、財布を買い替えました。

     

    私が財布に興味を持ち始めたのは、1年くらい前のことだったでしょうか。

    旧友二人と久しぶりに居酒屋で酒を酌み交わした時のことであります。

    お会計はもちろん割り勘方式で、それぞれが財布を取り出した時、

    私の財布を見た一方の友人が「なんだ、そりゃ。」

    「だめだよ、財布はある程度良いものを使わないと」と苦言。

    それは、ディスカウントショップで購入した三千円程度の折財布でした。

    もう、一方の友人も「俺もスーツはイオンとか安いやつだけど、財布だけはお金かけるよ」と。

     

    二人とも5万円級のものらしい。

    「財布の値段は年収に比例するというよ」と友人。

    「なんだ!そんな迷信みたいなもん!」と内心否定した私だったが、

    営業成績の振るわない折、

    何にでもすがりたい気持ちが、酔って気分をよくしていた私の心の内に再びどんよりと湧き上がってくるのを感じました。

    せっかく向上した気分を消沈させたくなかった私は宣言しました。

    「よし、明日必ずお前たちより高額な財布を購入してラインで写真送ったる!」

     

    かくして、翌日イオン内にある【ハイブランド】のアイテムが並ぶお店で「長財布」を購入致しました。

    約束通り、ラインでレシートの写真を送付すると、友人たちは私の【有言実行】を称えてくれました。

     

    その日以来約一年、使い慣れない長財布に不便さばかりを感じながらも、その効果を検証中の昨今でございました。

     

    そして、その時は訪れました。

    「岩原さんにプレゼンしたい案件があるのですが・・」

    後輩の営業N氏の一言とその件にまつわる重厚なカタログ冊子。

    「ちょっと、ちょっと~!やめてよ!」

    私は声に出し、はっきり拒絶の意を表しましたが、

    私のためにわざわざ銀座のショップから自宅を経由して職場(現場)まで持ってきてくれたという以上、拝見しないわけにもいかず、手に取って見てみるとこれがすごく興味をそそる内容でありました。

    (素材の皮と手作りによる製法へのこだわりが実に好ましい)

    私がそう感じていると、N氏が追い打ちをかけるようにその魅力を私に語り始めたのでした。

    彼がその時話してくれた内容はもとより、それを話す彼の表情や言葉の強さに私は一気に感化されるのを感じておりました。

     

    かくして、翌休日に私は妻子を引き連れて銀座に赴き、手にしたばかりの小遣いを財布からまるごと取り出し、威勢よくまた長財布を購入したのでありました。

    財布を購入したことによって、財布の中身がほぼ無くなってしまったことに若干の矛盾を感じながら【心細い視線】を妻に送ると、妻はすぐに目を逸らしました。

    (明日、トレジャーファクトリーに行って使用頻度の低いアイテムを売りに行こう)

    しかし、今度の財布は使いやすい!すぐに愛着のようなものが湧きはじめ、持っているだけで気分が高揚してくるのでした。

    (ああ、何か買物がしたい!財布を使う動作がしたい!)

    自販機でジュースを買うことでさえ、心待ちにするような気分の高揚でした。

    (わずか数日でこの財布を失くしてしまうようなことが起こりうるかも知れない)

    などと、私の癖である【絶望的観測】はこの時でさえあったのですが・・

     

    第二章~

     

    その日は仕事で、【ご自宅を売却されるお客様】のお手伝いで現地へ赴きました。

    約束の時間より少し早めに到着すると、奥様がすでに家具や不要なものを搬出する準備をされており、玄関のドアは開け放たれておりました。

    その日の約束の内容はホームインスペターによる簡易な建物調査でしたが、単に待っているわけにもいかず、持っていたカバンを玄関の上がり框に置いて手伝っておりました。

    カバンにはあの財布が入っておりました。

    ひとしきり家具の移動などをし、ひと段落した頃にホームインスペクターの大先生がご到着。

    室内の傷んでいる部分などチェックしていただきながら説明を聞き、質問をさせていただきながら、ふと玄関に置いたカバンのことが気になり始めていました。

    玄関の扉は開いたままでした。

    時折、外から聞こえる他人の声に反応しながらチラチラとカバンを見つつ、(まさかね)という思いがあり、そのまま二階へ上がったり戻ったりして調査が終了しました。

    その時点でカバンはきちんと元の場所にありました。

    調査は特に大きな問題も見つからず、大先生はお帰りになられました。

    私はまた家具の移動などを手伝いながらもやはり、(カバン、移動するべきだな)と心の中で何度も反芻しておりました。

     

    家具の移動を終えた奥様と私は、先ほどの調査を踏まえた注意事項をご説明させていただくべく、一緒に二階へ上がりました。

    一か所だけ修繕を依頼してほしい個所をご案内させていただきました。

    すぐにまた一階におりましたが、その時私の全身に戦慄が走りました。

    「あ、カバン!!」

     

    玄関を見る。

    (ない!!!)

    どこかに移動したっけ?

     

    リビングを見る

    (ない!!!)

    和室を見る!!!

    (ない!!!)

    トイレを見る

    (あるわけない!!!!)

     

    パニック!!!

     

    奥様が心配してくれました。

    財布が入っていたことを知った奥様は外まで駆け出して行って、

    その辺に放り出されてないかと確認までしてくれました。

    しかし、

    私はもう、ほとんど確信していました。

    「ヤラレタ」

    「ヤッテシマッタ」

     

    後悔。

     

    そもそも現場に持って来なければ・・

    玄関に置かなければ・・

    移動するタイミングは何度もあった・・

     

    打ちのめされた私は、神にもすがる思いで二階を確認しに行く。

     

     

     

    あった・・。

     

     

    ちょうど、奥様に説明をさせていただいた地点

     

    そこに普通にあった

     

    無意識に持ってきていたのだ

     

    馬鹿な俺。

    でも嬉しかった。

    この上ないほどに。

     

    そしてもうひとつ、

     

    奥様がすごく喜んでくれました。

    ばかな私にあきれながらも、ほんとに良かったねと。

    「久しぶりに心臓がバクバクしちゃったわよ」と仰いました。

     

    私は何度もお詫びとお礼を繰り返しました。

    安堵の中で心から思いました。

    自分のことのように一緒になって大騒ぎしてくれた奥様。

    このような人に出会えることは人生のひとつの喜びだなと。

     

    財布。

    一役買ったんじゃない?

     

     

    この文章を同僚の根市氏に捧げます。

     

    藤島住宅 岩原 賢太郎


    テーマ名 その他

    ページ作成日 2017-10-01







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